男性看護師が傾聴術のやり方を教えます
男性看護師というのは精神科出身が多いわけで、僕もそうなんです。
精神科というのは心の看護ってのをやってまして、話の聴き方にはこだわりがあります。
「他の科の注射や処置と同じなんだから、傾聴はしっかり勉強しなさい」
当時の副師長にそう言われた僕は結構色々な本を読んで勉強しました。
精神科にいても勉強してない人はしてませんが、精神科では日常的に行われていることですので、P科出身の看護師の特徴といえるかもしれません。
患者さん(及び利用者さん)相手にもいいんですが、おなじスタッフ同士でも結構使えるテクニックなんで覚えて損になることはありません。たぶん…。
受容・共感・傾聴
よく教科書にはこうでてくるんですけど、受容も共感も凄い言葉ですよね。
・受け入れる。
・共に感じる。
出来ます?
出来ませんよね。
相手と同じ苦しみを感じようと思ったら、同じ苦しみを経験してなきゃなりませんし、受け入れるなんて夫婦や恋人同士でもできてないんじゃないでしょうか?
それほど難しいテクニックをさらっと書かれても…。って感じですよね。
じゃあどうするか?
傾聴する。徹底的に傾聴する。そうすることで受容や共感っぽい感じを相手伝える。
いやらしい言い方になりますけど、これが基本になります。
基本というのは、いつ何時でも使えるスキルにしておくということです。
具体的な傾聴のやり方
で、結局のところ傾聴ってどうやんの?って話なんですが、
・うなづく(相手にしっかりわかるように)
・声を出して反応する(「うんうん」「へぇ~」「なるほどなるほど」など、大袈裟なくらいに)
・善悪や価値などこちらは評価をしない(聴くんですから、評価はしません)
・感情にだけ反応する(評価はしなくても感情は拾います「しんどかったですね」「嬉しかったですね」)
・1~2分くらいの沈黙は何も言わずに待つ(1分は思った以上に長いですが、待ちます。言いにくいことを言おうとしてる時に腰を折るようなことはしません)
これだけ意識してみて下さい。結構大変ですよ。
どんな話もこれで聴きます。
訴「主人が浮気しててね」
傾「うんうん」
訴「昨夜も帰って来なかったの」
傾「しんどかったね」
訴「どうしていいかわからなくて…」
…長い沈黙…
傾「(こちらからは言葉を発しません)」
訴「離婚しようかしら」
傾「その状況は本当にツラいですね」
短くまとめるとこんな感じです。
「離婚した方がいいよ!」とかは評価になりますから絶対に言いません。だって、言ってるだけかもしれません。止めて欲しい場合もありますし、本当に離婚したいのかもしれませんし、わかりませんよね。
それは本人が決めることであって、聴く側の意見を押しつけてもなんの解決にもなりません。
傾聴するということはそういうことではないんですよね。
かっこよく言えば、答えは相手の心のなかにだけ存在するんですから。
精神科の男性看護師の先輩にはよくこう言われました。
「それはお前の意見が相手に通って気持ちよくなってるだけじゃないのか?本当にそれがその人の答えなのか?」
厳しい言葉ですが、まさに自分の意見から脱却することが傾聴のコツです。
これは練習しないと上手くなりませんから、使える場面があったら練習してみて下さい。
このスキルが活躍するのは、相手が怒ってたりネガティブな感情を持ってるときです。
転職先でそういう場面を見つけたら、この傾聴スキルを使うことによってしっかりとした信頼関係を築くことが出来ます。
精神科出身の男性看護師にもたまには武器があるんですよ(笑)。
テクニック的なことを書きましたが、だからって冷たいとか思わないで下さいね。
話を聴く時は絶対これっていうことでもありません。ひとつの方法なだけです。でも、この方法は精神科やカウンセラーのみなさんが作りあげてきたエビデンスのある方法です。
もちろん、家族や恋人、友達なんかには思いっきり感情のままぶつかり合うべきで、それこそが素晴らしいところです。
でも、同僚や患者さんが相手の場合、僕達は全ての責任を負うことが出来ません。
相手の心がスッキリするように吐き出してもらう。
これが傾聴のゴールなんじゃないでしょうか?あと、これをやるには結構時間がかかります(話の内容次第ですけど)。なので、落ち着いた時にやりましょうね。僕は訴えの多い利用者さんの話を聴いていて、「いつまでやってんの?」とよく怒られます…。