男性看護師が摘便の方法を教えます
男性看護師として介護施設に勤務しているわけですが、介護施設では処置として浣腸・摘便が非常に多いんです。
主な理由は3つ。
・加齢により腸蠕動が低下する
・麻痺などで車椅子や寝たきりになると活動量が減り、それにより腸蠕動が低下する。
・麻痺などで気張ることができない。
このような事情で便秘になります。理由を見てもらえるとわかるのですが、下剤を使用しても自力排便が難しい人には浣腸、それでも出ない人には摘便を行うことになります。
そんなわけで平均すると毎日10人ずつくらいは浣腸しているので、ちょっとコツを掴めてきました。
さて便秘には
・便が固くて出ない。
・腸の動きが悪い。
の2種類があるのですが、施設で多いのは両方。つまり腸の動きが悪く、なかなか降りて来ない内に硬くなるというものです。
摘便にしても直腸まで来てない便は指が届きません。前日などに下剤を使用して降ろしておきましょう。
浣腸
浣腸はみなさんやったことがあると思うのですが、プライバシーをしっかりと守ることが大切です。外から見えないようにしっかりとカーテンを引く、本人に浣腸する理由を説明する。
当たり前のことですが、本人の意識がはっきりしない入所者が多い介護施設では忘れられがちです。僕は男性ですから特にこのあたりのことには注意しています。
1)あらかじめラバーシーツなどを敷いておく。
2)血圧測定。腸を刺激することによるショックを来たすと血圧が下がりますし、一気に便が出ることでも血圧が下がる可能性があります。特に初めての患者さんでは測っておきましょう。
(ただし、省かれることも多くあります)
3)本人に説明し、プライバシーを保護する。
4)腸の走行に従って、左側臥位になってもらう。
5)両手にゴム手をつける。
6)グリセリン浣腸(主に60ccを使うことが多い)を空けて、左手で先端を包むように持ち、液を少し出す。
これによって、先端の潤滑と液がきちんと出ることを確認します。最近はキシロカインゼリーは使いません。
7)大きな口で息を吐いてもらいながら、6センチほど挿肛します。
8)一旦休憩し、再度大きな口で息を吐いてもらいながら、グリセリン液を注入します。
9)1分ほどトイレットペーパーなどで肛門を圧迫します。
(教科書などでは3分とか書かれていますがちょっと長いですよねぇ)
10)自力で排便出来る患者さんなら「ギリギリまで我慢してから気張って下さい」と伝える。
こんな感じです。
摘便
それでも出ない患者さんにはしばらく待ったあと摘便に入ります。個人差がありますが、15分~30分おいて摘便することが多いですね。
1)摘便も左側臥位で行います。
2) ゴム手をつけて指に潤滑剤を塗ります。キシロカインゼリーを使わなくなりましたので、僕はさきほどのグリセリン浣腸液の残りを指に塗ることが多いです。
3) 大きな口で息を吐いてもらい、指を挿肛します。
4)少しずつ指で便を掻き出すのですが、ポイントが1つ。
この図のように指を外側に反らすようにして掻き出しましょう。指を内側に曲げて行うと、直腸の直径以上になり、傷つけてしまいます。なので、指の関節を自由にせず、棒のようにして、掻き出すイメージで。
5)多少の出血はありますが、あまり出血が多い時は中止しましょう。
硬便が出ると、残りは自然排便で出る場合もあります。その場合は、摘便は終了して自然排便を待ちましょう。
6)出ない場合でも指に触れる範囲の便がなくなれば終了です。
7)出た便の量と性状を観察し、陰部洗浄を行います。
腹部マッサージ
あまり意味がないと言われている腹部マッサージですが、介護施設ではよく行っています。
簡単に言えば大腸の走行に沿って腹部を圧迫していくんですが、大腸の走行覚えてますか?
覚えやすい方法として、「の」の字を書くというのがあります。図を見て下さい。
赤いペンで描いたように大腸は走っています。
ですから右下腹部からスタートして「の」の字の方向に圧迫していきましょう。
右手で摘便しながら左手を伸ばし腹部マッサージをするという複合技もよく使います(その際左手はグーにして圧迫)。
上腕二頭筋あたりが痛くなるのですが、そうしなければガスも出ないような患者さんもいますので…。
食べて出すのは人間の基本
食べて出すのは人間の基本です。人間を看るのがナースの仕事ですから、おろそかには出来ません。
どんな年齢でも、疾病でも、排泄は非常に重要な事柄です。
拙いまとめですが、ちょっとでもお役に立てれば。